「キカイ」の子
「鍬原さんと一緒にいたい…病気だとかそんなの関係ない…だから、だから…」


「もう…いいよ…」


気持ちが先行して、上手く話せずにいる冬彦を、夏美が優しく止めた。



「え……?」



話を止められ、不安そうな顔をする冬彦に、夏美は笑顔を浮かべて言った。



彼女が笑った時、潤んだ瞳から涙がこぼれ、それは夕日を受け、輝きながら頬を伝っていった。





「ありがとう…高椿君。…ごめんね?信じられなくて…」




夏美はそう言うと、本格的に泣き始めた。




しかし、その顔は、冬彦が見たことがないほど、嬉しさで満ちていた。



「あたしも、高椿君のこと……大好きだよ。」



夏美は涙声で言った。




冬彦も状況を理解して、少し泣きそうになっていた。










教室に、二人の嬉し泣きの音が響く中、入り口の引き戸の廊下側に隠れていた透は、



「おめでとう。」




と目をつむって、小さく呟いた。
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