「キカイ」の子
「せっかく…冬彦とつきあえたのに…」


夏美は冬彦の方を見て、聞こえないように呟いた。




「ん?何か言った?」




考え事をしていた冬彦は、彼女の言葉に気づかなかった。



「……別に。」



夏美は少し怒ったように言った。





……海か。一度健一さんに訊いてみるかな?…




冬彦は、むくれている夏美をちらちら見ながら、そんなことを考えていた。




「あ、あたし…ここまでだから…」





夏美は十字路に差し掛かると、冬彦に言った。



「うん。わかった。じゃあ…明日にでも健一さんの所に行かない?」


「健一さんの所?何で?」


「……海に行って良いかを聞きにね…」




冬彦がそう言うと、夏美は顔を明るくさせた。



「うん!わかった!じゃあ、明日のお昼に病院で!」



夏美はそう言うと、嬉しそうに帰って行った。



冬彦は、何度も振り返る夏美を見送ると、空を見上げた。








大きな入道雲が、青い空にそびえ立っていた。
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