「キカイ」の子
冬彦が病院で倒れたあの日、健一は、透が倒れ、それを心配しすぎた冬彦も倒れた、という嘘を聡に伝えていた。


そして、聡はまだこの嘘に気がついていなかった。













「はい。気をつけます、父さん。」




冬彦が注意を素直に聞くと、聡は少し安心したような表情を浮かべた。




「それじゃ…行ってくる。」





聡はそう言って、リビングから出て行った。




「行ってらっしゃい。」





冬彦は、聡に背を向け、飲み終えたグラスを水ですすぎながら言った。






それが終わると、冬彦はテレビをつけた。






冬彦と夏美が付き合い始めて、彼は彼女との会話が噛み合っていないことに気づいた。





そのため、冬彦は最低でも、一日に一回はテレビを見るようにした。








テレビを見ながら冬彦は、明日、健一に何と話そうかと考えていた。
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