「キカイ」の子
看護婦が話し終わると、健一は冬彦を見て言った。






「高椿君、悪いが、急用ができた。…その話の続きは、僕の部屋でしよう。先に行っててくれないか?」




健一はそう言うと冬彦の返答も待たずに駆けだした。





「えっ?」






冬彦は呆然と立ち尽くしていた。



「健一さんの部屋なんて…僕、知らない。」




そう言った後、冬彦は夏美を見た。





すると、夏美はどこかに歩き始めていた。




「な、夏美っ!どこに行くの?」





冬彦がそう訊くと、彼女は振り向き、




「え?健一さんの部屋だけど?」



と、軽い調子で言って、また歩きだした。




「え?」





冬彦が驚いて、固まっていると、夏美が再び振り向き、



「何してるの?冬彦。置いてくよ~?」




と、意地悪そうに笑って言った。






冬彦が慌てて彼女を追いかけると、さっきまで機嫌が悪かった夏美は、鼻歌を歌っていた。
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