「キカイ」の子
部屋の中は、狭くて、物もたくさんあったが、きれいに片付けられていて、不快感を感じることはなかった。







中には、医学書がギッシリと詰まった本棚や、少し古い黒皮のソファー、たくさんのファイルが上に並んでいる机などがあった。





夏美はソファーの上に、勢い良く座り込んだ。





「ちょっと、夏美。止めなよ。」





冬彦は、我が物顔で行動する夏美を諫めた。





「何が?あたしは昔っから、こうやって座って待ってたんだよ?」






「…昔っから?」




…ああ、そうか。健一さんは夏美の主治医だったっけ…





それなら、何度も夏美はここに来ているはずだし…緊張しないのもわかるか…





冬彦はそんなことを考えて、夏美を見ていた。






すると、夏美も冬彦を見て、


「座れば?」


と軽く言った。







冬彦は苦笑いをしながら、夏美と並んで座った。





二人が座ったので、ソファーが深く沈み込んだ。
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