「キカイ」の子
「まぁ、そんな状況だから、僕の最初の仕事は彼女の機嫌を直すことだったんだ。

最初は優しくなだめたりしていたんだけど…彼女ったら、全然、機嫌を直してくれなくてね…診察を始めるのに、だいたい…一時間ぐらいかかってたんだよ。」


健一がそう話す間、夏美もジュースのパックを手でいじりながら、同じように昔を思い出しているようだった。



「…でもね、ある時、僕は患者の男の子から、それ…ミックスジュースをもらったんだよ。

それで、それを持って部屋に帰ると、案の定、長い間待たされた彼女は怒ってたんだ。

それから…いつものように、なだめようと、ジュースをここに置いたんだ。」



そう言って、健一は机の角を指で軽く叩いた。



「そうしたらね…ふふっ…」





健一はそう言うと、思い出し笑いをした。
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