「キカイ」の子
「暑い…」



夏美は電車を降りるなり、急に元気をなくした。




「仕方ないじゃない。夏なんだからさ…」





冬彦が呆れた様子で彼女に言った。






「そうなんだけど…あ~太陽が憎たらしい。」





夏美はそう言って、太陽を睨みつけた。




すると、彼女の肩が突然軽くなった。






「え?」




夏美が驚いて、自分の肩を見ると、さっきまでそこに掛けていた鞄がなくなっていた。








「早く行くよ~夏美。」



「冬彦、あたしのカバンがっ!」





夏美はそう言って、自分の前を歩いている冬彦を見ると、


「あ…」


と、目を丸くした。







冬彦の手にその鞄が握られていた。







「少しは楽になった?」




冬彦が笑いながら振り返って、夏美に訊いた。






夏美は、電車の中にいた時よりも、機嫌が良くなっていた。
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