「キカイ」の子
「ど、どうしたの?」





冬彦は黙ったまま夏美を見ていたので、怒らせてしまったのかと不安に思った彼女が訊いた。





「えっ…ああ、いや…その…何でもないんだ。」





冬彦は、しどろもどろになりながら、頬を赤くした。





夏美は彼の様子を不思議そうに見ていたが、彼女は冬彦の手に何かが握られていることに気づいた。







「…冬彦、それ何?」




「あぁ…これ?」





冬彦は落ち着きを取り戻して、掴んでいる物を見た。






それは、空気を入れて膨らませる、ビニール製のマットだった。
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