「キカイ」の子
「もしかして…内緒にしてたのって、コレ?」




夏美は、マットを手にとり、上目遣いで冬彦を見た。





「そう。…ほら…夏美はあんまり動けないでしょ?だから、海で水に触りながら、ゆっくりできるものを持ってきたんだ。」





冬彦はそう言って、照れくさそうに頭を掻いた。





「別に内緒にしなくてもいいじゃない。」



夏美は最初は驚いていたが、すぐに呆れ顔になった。





「まぁ、そうなんだけどさ…」


…驚かしたかったんだよね…





冬彦は、また頭を掻いていた。








夏美はしばらくビニールのマットを見ていたが、急に笑い始めた。




「どうかした?」




冬彦が怪訝な顔でそう言うと、夏美は、


「それじゃ、頑張って空気入れてね。」


と、笑顔で彼にマットを投げた。




「え~、僕一人で~」



冬彦は不満そうに言ったが、夏美は笑ったまま手伝う気配がないので、しぶしぶ空気を入れ始めた。













「……ありがと。」


夏美は、空気を入れる冬彦の背中を見ながら、彼に聞こえないように小さく呟いた。
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