「キカイ」の子
「夏も、終わりなんだね…」



「うん…そうだね…」




夏美が寂しそうに話すのを聞いて、冬彦は頷くことしかできなかった。





「あ~あ、このまま、時間が止まればいいのにな。」



夏美が投げやりな感じで言うと、冬彦はうつむいて考えた。



…時間が止まれば、夏も終わらない、夏美の病気も進行しない………



夏美は……死なない。






彼がそこまで考えていると、夏美が海の方を見ながら言った。






「最近ね…分かるんだ。あたし、もうそろそろ死ぬんだなって…」





冬彦はその声を聞いて、夏美の方を驚いた顔で見た。





夕日に照らされる彼女の顔からは、恐怖や落胆の色はうかがえなかった。






夏美の顔は、すがすがしいといった表情をしていた。
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