「キカイ」の子
「でもね…あたし何となく思ったんだ…」




夏美が顔を伏せて、そう言うと、冬彦は彼女の方を見た。







「あたしが死ぬこと自体は、そんなに怖くなくなったの…


でも、そのせいで、冬彦と別れなきゃいけない……それが怖いし…嫌なの。」




「…僕も嫌だよ。」


「え…?」





ずっと黙っていた冬彦が口を開いたので、夏美は驚いて彼を見た。





「僕も…夏美と離れたくないよ。ずっと一緒にいたい。

高校も、大学も、社会に出ても、夏美の隣に…いたい。」





冬彦はそう言いながら、泣いていた。




「バカ…冬彦が泣かなくていいのよ。」




夏美は優しくそう言って、冬彦の涙を手で拭いた。








しばらくの沈黙の後、夏美が冬彦の目を見て、言った。











「冬彦……キス……して。」
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