「キカイ」の子

二人の距離

「ただいま…」



冬彦が家に帰ってくると、リビングから聡が歩いてきた。




「こんな時間まで何をしていたっ!」





聡は顔を真っ赤にしながら怒鳴った。






聡が怒鳴った後、リビングの方から郁恵もやってきた。





「冬彦っ!」






郁恵は、冬彦を心配していた疲れからか、青ざめた顔をしていた。






「冬彦っ!何をしていたっ!答えなさいっ!」





聡はもう一度、更に大きい声で怒鳴った。



「聡さん…まずは、冬彦を家に上げましょう?」





郁恵はそう言って、冬彦を上がらせようと、彼の後ろに回り込んだ。





その時、冬彦の髪が少し濡れていて、その髪からほんの僅かだが、潮の香りが漂っていることに気づいた。






「冬彦…まさか、あなた…海に行っていたの?」
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