「キカイ」の子
冬彦と透が教室に入ると、夏美はまだ来ていないようだった。





「あれ?夏美のやついないじゃん。」



自分の席に鞄を置きながら透が言った。


「そう、みたいだね。」



冬彦は教室の中を見回しながら言った。





そして、夏美が来ないまま、学校のチャイムが鳴った。












その日、夏美は学校を欠席した。











「夏美…どうしたんだろ?透は何か知ってる?」




放課後、冬彦は帰る支度をしながら、透に尋ねた。




「おいおい…彼氏が知らねえことを、何でオレが知ってんだよ。」





透は部活の用意をしながら、呆れた声を出した。



「帰りに夏美のとこに寄っていけば?じゃ、オレ部活あっから…」





透はそう言うと、走って教室を出ていった。









残された冬彦は、今日一日、誰も座らなかった夏美の椅子を不安そうに見つめていた。
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