「キカイ」の子
夏美は今日も来なかった。






冬彦と透は、昼休みも大して話さず、ただ、この重い空気に押し潰されないように耐えていた。










「冬彦…今日は、どうするんだ?」





放課後に部活の用意をしている透が、冬彦に訊いた。






「どうするって…何を?」





冬彦は、帰る用意をしながら、透を見ずに答えた。









「やどりぎに…寄るのか?」









「……うん。」








「そっか…それじゃ…」







透は、冬彦を心配そうに見ていたが、部活に遅れるので、後ろ髪を引かれながらその場を去った。











…僕が行って、夏美に何をしてあげられるのだろう、僕に…夏美の病気は、止められないのに…








一人教室に残った冬彦は、自分の無力さを呪い、そのどうしようもない苛立ちに押されて、側にあった机を殴った。









ガンッ!








教室にその音がむなしく響いた。
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