「キカイ」の子
冬彦はやどりぎの前まで来ると、門の前で立ち止まっていた。





…夏美…いるのかな…




冬彦は門の上に手を置き、中をうかがった。






すると、庭の角で尾野が、花壇に植えられた花の手入れをしているのが見えた。





冬彦がその様子をしばらく眺めていると、尾野が彼に気づいた。







「あら?冬彦くん?今日も何か用なの?」






尾野は冬彦に気づくと、手に持っていたジョウロを足下に置き、彼に歩み寄った。






「えぇ…あの…夏美は?」






冬彦は正門越しに、中にいる尾野に話し掛けた。






「……夏美ちゃんね、今朝も病院に行って、まだ帰ってきてないの。」




「そう…なんですか…」




冬彦はそう言うと、肩を落としてその場を離れた。











尾野は彼を心配そうに見送った後、建物の中に入った。







そして、尾野は夏美の部屋のドアを開けた。









「夏美ちゃん…これでいいの…?」






夏美は自分の部屋の窓から、外を眺めていた。
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