「キカイ」の子
翌朝、冬彦は一人で登校していた。







いつもなら、途中で、透が明るい声で話し掛けてくるのだが、今朝はその姿を見かけなかった。








校門に着くまで、冬彦は何度も後ろを振り返り、あの明るい声を探したのだが、結局見つからないまま、教室に着いてしまった。








教室の中にも、透はいなかった。








夏美の席も空いたままだった。








朝のホームルームで、長谷川は冬彦に透の欠席について尋ねてきた。






冬彦が、知らないです、とだけ言うと、長谷川は首を傾げながら教室を出て行った。







どうやら、担任にも知らされていないようだった。









冬彦の胸で、嫌な予感がくすぶり始めていた。
< 203 / 363 >

この作品をシェア

pagetop