「キカイ」の子
「夏美…入るよ…」







冬彦は、ゆっくりと、まるで、鉄でできているかのように感じる病室のドアを開けた。









夏美は窓の近くにあるベッドに寝ていた。






しかし、彼女は冬彦の方を見ようとはせずに、窓の外を見ていた。






冬彦は、何を見ているのか気にしながら、彼女に近寄った。







窓の外は、もう日が暮れ、真っ暗になっていた。








冬彦は、ベッドの近くに来ると、小さな丸椅子を見つけ、それを引き寄せて座った。







「……夏美…」






冬彦は、続く言葉を見つけられず、黙って夏美を見ていた。






すると、彼女が初めて冬彦を見た。
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