「キカイ」の子
「冬彦…ありがとう。お見舞いに来てくれて…」





夏美は、笑顔を浮かべて言ったが、冬彦には、その笑顔が、どこかぎこちないように感じた。







「…ごめんね?ずっと…黙ってて…」





夏美は、顔を下に向けて、申し訳なさそうに言った。






「……どうして…黙ってたの?」






冬彦は、うつむいて黙っている夏美を見ていた。









「…どうして…会ってくれなかったの?」








夏美は、依然として黙っていた。








「ねぇ…夏美っ!」







冬彦は、感情を押さえきれず、立ち上がって、夏美の両肩を掴んでいた。






「…いたっ…」






夏美が小さくそう言うと、冬彦は我を取り戻した。







「あ…ご、ごめん。」






冬彦は慌てて、両手を離した。






夏美は、しばらくの間両肩をさすっていたが、また、窓の外を見ながら話した。
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