「キカイ」の子
冬彦が不思議そうな顔で健一を見ていると、健一は、冬彦に近寄り、穏やかな口調で話した。







「高椿君…夏美ちゃんのことだけどね…」






健一の口から、夏美という言葉が出ると、冬彦は、胸を押さえた。






「どうしたんだい?」






健一は、冬彦の様子が気になり、声を掛けた。







「何でもないです。ちょっと、胸が痛んだだけですから…」






冬彦がそう答えると、健一は、少し嬉しそうな顔をした。







「そう…まだ、希望はあるんだね。」





「健一さん?」





冬彦は、何やらボソボソと話している健一に話し掛けた。








「ん?あぁ…何でもないよ。ところで、夏美ちゃんのことなんだが…」







冬彦は、また胸を押さえて、黙ってうつむいた。
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