「キカイ」の子
冬彦は家に帰ってくると、自分の部屋に上がり、ベッドに寝転がった。









しかし、数分後には、机に向かい、勉強を始めた。








だが、その手は、以前のようにはスムーズに動かなかった。






彼の頭に、夏美のことが浮かぶ度、胸が痛み、そして、どうしようもない悲しみがこみ上げてきた。







ひとつ、ふたつ、と開かれたノートの上に、滴が落ちていく。








「……夏美ぃ。」







冬彦はそう言うと、声を押し殺しながら、涙を流した。








ノートは字が書けないほどに濡れてしまい、彼の手はシャーペンを放して、ギュッと握り締められていた。









冬彦は、それからしばらくの間、机に倒れ込み、肩を震わせて、泣いた。
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