「キカイ」の子
「え…」





「夏美は…夏美は…今でも、おまえが好きなんだよ…

でも、死んじまうから!離れなきゃいけないから!

…だから、それが辛くならないように、自分から、冬彦と別れたんだよ…」






そう言う透の目は潤み始めていた。





「そんな…」







「…オレだって、この二週間。夏美の所に行って、励ましてきたんだっ!でも…」





透の目から、涙がこぼれ、冬彦を掴む手も弛められた。






「でも…無理だったんだ…オレじゃあ…駄目だったんだよっ!どんなに…どんなに頑張っても、オレには夏美を元気にしてやれなかった…」







透は、冬彦を見れなくなって、顔を下に向けた。





「透…」







「おまえじゃなきゃ駄目なんだよっ!夏美には…おまえが必要なんだよっ!」







透の悲痛な叫びが、屋上全体に響いた。
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