「キカイ」の子
健一の部屋から出た冬彦は、黙ったまま夏美の病室に向かっていた。





彼は、透や健一からの言葉を聞いた今でも、夏美に会うことが怖かった。







好きじゃない。







その言葉が彼の頭にちらつく度に、冬彦はため息を吐いた。








そうやって冬彦が歩いていると、いつの間にか、彼は夏美の病室の前にいた。








数分間、彼は病室のドアの前で息を整える。







そして、彼は取っ手に手を伸ばした。








その瞬間、彼の脳裏にあの日の光景が浮かんだ。







彼の手が少しだけ震え、彼の顔にはじんわりと汗が出てきた。







冬彦はそのまま、荒い息を吐きながら、取っ手を掴んでいる自分の手を見ていた。








……やっぱり、怖い。夏美は…本当に僕に会いたがっているのか?






冬彦がそう思って目を瞑った時、その瞼に夏美の姿が浮かんだ。







彼女は泣いていた。






夏美はあの日と同じように、ベッドの上で大粒の涙を流して、こちらを見ていた。
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