「キカイ」の子
「な~に?透ったら、恩着せがましいのね。いったい何を…」





最初の方は急に立ち上がった透を見ていたが夏美だが、ゆっくりと冬彦を見て、声を失った。







「………うそ。」







夏美は目を丸くして、信じられないといった声を出した。







そんな彼女の様子を満足気に眺めていた透は、二人を交互に見ると、静かに部屋から出て行った。







しかし、冬彦も夏美も透の姿を目で追わずに、固まったまま、お互いを見続けた。












沈黙を破ったのは冬彦だった。







「夏美。久しぶり。」






彼はそう言って、さっきまで透が座っていた丸椅子に腰かけた。






しかし、夏美は冬彦が近寄ってくる間に、顔を彼から背けて、窓を見ていた。







「…夏美?」







冬彦は夏美が気になり、声を掛けた。






すると、目は合わせ無いで、夏美は口だけを動かした。







「…なんで?」




「何が?」





「なんで…来たの?あたしは、もう冬彦のことなんて……」





「いいんだよ…そんなこと…」




「え?」
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