「キカイ」の子
「……夏美?」






冬彦は不思議そうな顔で、夏美を見た。







彼女の顔は下を向いていたため、どんな表情をしているのかは分からなかったが、彼女の肩は震えていた。








「………いじゃ……ない。」







「え?」








夏美の声はとても小さく、冬彦の耳には届かなかった。








「嫌いじゃないっ!」







夏美が何かを振り払うような大きな声で叫んだため、冬彦は驚いてしまった。








「夏美……?」








冬彦は心配そうな顔をして、その場に片膝をつくと、夏美の顔を覗き込むように見上げた。







「夏美…泣いてるの?」







彼の問い掛けに、夏美は答えなかったが、その代わりに彼女の目から涙がこぼれ落ちた。







冬彦は、ベッドのシーツに落ちた夏美の涙を目で追った。







滴はじわじわと生地に染み込み、楕円形に広がっていく








「あたし……冬彦のこと…嫌いなんかじゃない…」








涙の様子をジッと見ていた冬彦だが、夏美が話し始めたので、そちらを見た。





「え…?」
< 235 / 363 >

この作品をシェア

pagetop