「キカイ」の子
「あたし…冬彦のこと…嫌いなんかじゃないよ?」






夏美は、涙で潤んだ目で冬彦を見つめ、涙声で話した。






「……夏美…」





「あたし…夏休み以来…冬彦の事…忘れようとした。」






「え…?」



…夏休み以来?あの海に行った日の事か…






冬彦がそんなことを考えている間も、夏美は泣きながら話した。







「冬彦があたしにキスしてくれたあの日…あたし…とっても嬉しかった……でも、その後…急に恐くなったの…」





冬彦は黙ったまま、夏美の言葉に耳を傾けている。







「……だって、あたし…死んじゃうんだよ?」





「――っ…」







「あたし…絶対に…冬彦と別れなきゃいけないんだよ?だから……冬彦と…距離を置いたの…」







冬彦はその時、ようやく、夏美の抱えていた悲しみや怒りを理解することが出来た。







それと同時に、彼の目に涙が込み上げてきた。
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