「キカイ」の子
冬彦が家に着くと、時計はもう午後三時を回っていた。







いつもと変わらず、高椿家には冬彦しかいなかった。







冬彦は、玄関に上がるなり、直ぐに二階へと上がっていった。







彼は部屋に入ると以前していたように、机に向かった。







そして、机の片隅に置いてある参考書を掴んだ。







ここ最近、まったく開いていなかったせいで、表紙には少しだけ埃が被っていた。







というのも、最近の冬彦の頭は夏美のことで一杯だったからだ。









彼は軽く表紙を叩いて埃を払い落とし、本を開いた。













そして、この部屋に、前と同じ絵画のような世界が生まれたのだが、以前とは決定的に違う所が一つだけあった。









それは、絵の主人公の表情だった。











彼は生き生きとした表情で机に向かっていた。
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