「キカイ」の子
冬彦の中に突如として生まれたその疑問は、日に日に大きくなり、最近では、彼は勉強という言葉を聞くだけで、その事について考えてしまうようになっていた。













彼は物心ついた時から、机に向かい、周りの子供達よりも数段上の問題を解いていた。








しかし、そこに自らの意思があったわけではない。







彼には将来の夢などは無かったし、また、当時から、聡も郁恵も家を空けがちだった事を考えると、冬彦は、自分が勉強したからといって、彼らから誉められるとは微塵も思っていなかったからだ。














そうであるにも関わらず、彼が机に向かっていたのは、聡達に命令されたから、という単純な理由だけだった。








幼い冬彦にとって、その命令は、疑うことすら許されない絶対的な物だった。







だが、最近になって、冬彦の中で、その絶対性が崩れ始めたのだ。
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