「キカイ」の子

人として

静まり返った病院の廊下に冬彦と健一の足音が響く。






どちらも口を開こうとせず、ただ黙って夏美の部屋へと向かっていた。







廊下は病室以上に寒く、二人の吐く息は白く染まっていた。






冬彦は何気なく窓の外を見たが、そこには反射した自分の姿が映し出されていた。








……夏美には…黙っておこう…







冬彦は自分の体については、全て伏せることにした。








言えば夏美は信じてくれる。







冬彦はそれを分かっていたが、彼女にこれ以上の負担をかけたくなかった。







改めて意思を固めた冬彦が健一の後を追って四、五分経った頃、彼らは夏美の病室の前に立っていた。
< 319 / 363 >

この作品をシェア

pagetop