「キカイ」の子
「ただいま…」


学校から帰った冬彦が、玄関で呟いた。





「お帰り。冬彦。」




今日はいつもと違って、リビングの方から声が聞こえてきた。






その声の主は、聡だった。





彼は冬彦の方へ、廊下を歩いてきた。手には紙を挟んだファイルを持っている。







「お父さん…今日は帰ってたんですか?」






冬彦は、少し驚いた顔をしていたが、彼の声にその感情は乗っていなかった。






「あぁ。だが、コレを家に取りに戻っただけで、またすぐに出かけなければならないんだ。」





そう言って、聡は透明のファイルを軽く叩いた。






「そうですか…」




冬彦は抑揚無く小さく言った。






聡は、そんな彼の様子を気にせず、冬彦に話し掛けた。
< 32 / 363 >

この作品をシェア

pagetop