「キカイ」の子
健一が運転する車の中で冬彦の隣に座っている夏美が、彼にもたれ掛かってきた。




「どうしたの…?」




冬彦は夏美の耳元で囁いた。



「大丈夫…ちょっと…疲れただけ…」



そう話す夏美の顔は青白く、冬彦は彼女の肩に手を回し、力強く引き寄せた。



「あ……」



夏美は驚きの声を小さく挙げたが、冬彦を押し退けることもせず、ゆっくりと彼の胸に自らの顔を埋めた。










「………あったかい。」








ラジオも点けていない静かな車内に溶けてしまいそうなほど小さな声で、夏美は微笑みながら自然と呟いていた。
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