「キカイ」の子
夏美はそこまで声をあらげて言い終えると、後ろを向き冬彦の手を取ってゆっくりと歩き始めた。







歩き始めてすぐに冬彦は夏美を抱き寄せ、彼女を自分に寄り掛からせながら歩いた。






彼の隣で、彼女はまるで迷子になった子供みたいに泣きじゃくっていた。





冬彦は空いた手で夏美の頬を優しく拭いながら歩く。







そんな二人の光景を健一はじっと遠くから見つめていた。






一歩一歩、左へ右へ揺れながら歩く二人が角を曲がって見えなくなるまで、健一は目を潤ませながら彼らを見ていた。







そして、二人の姿が完全に壁の向こうに消えた時、健一は声を出して泣いた。






何度も何度も、固く握った拳で目の前にあるハンドルを叩いた。






「……くそっ!」






ダンッ!










日の出前の早朝、静かな街に、大きなクラクションの音が鳴り響いた。
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