「キカイ」の子
学校からしばらく歩いた頃、泣き止んだ夏美を横に連れ、歩いていた冬彦だったが、寄りかかっていた体重が一気に重みを増した。





「……夏美?」




冬彦が尋ねても夏美からの返事はなく、冬彦は一度、夏美を地面に座らせ、顔を覗き込んだ。






「大丈夫か?夏美?」



「う…うん…平気…」




そう言う夏美の顔は全然平気そうではなかった。





冬彦はしばらく考えた後、着ていた制服の上着を脱ぎ、それを夏美に掛けると、彼女に背を向けてしゃがみこんだ。




「ほら、乗りなよ?」




冬彦はそう言って、後ろに手を回し、夏美が乗るのを待った。




「え!……いいよ!大丈夫だよ!歩く!」



「いいから!この先からは少し坂になるから…ね?」







夏美は困った顔をして、小さな声で唸っていたが、観念して冬彦の背に乗った。




「う~恥ずかしい…」




冬彦の背中でそう呟く夏美だったが、彼に回された腕は離れないように、彼を強く締め付けていた。
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