「キカイ」の子
朝靄が覆う高椿邸の前で冬彦は立ち止まった。

夏美が、冬彦の家見たい!と言ったからだった。





冬彦の背中で夏美は感嘆の声を漏らし、輝く目で冬彦に話し掛けた。





「すっごいね!私、こんなおっきな家見たのテレビぐらいしかないよ!」



「夏美は初めて見たの?」



「夏祭りの時にチラッとだけ見たの…それ以外は、やどりぎから眺めるくらいしかできなかったから…こんなに大きいなんて知らなかった~」






そう言うと、夏美はまた嬉しそうな声を出して、冬彦の家を見ていた。






「そんなに…広いことは良いことじゃ無いかも…」




冬彦が小さく呟いたそれを、夏美は聞き逃さなかった。
< 332 / 363 >

この作品をシェア

pagetop