「キカイ」の子
「…そうかな…」



冬彦は足を止めずに歩いている。




「そうだよ……どんなに傷つけあったって…どんなに気まずかったって…いつかは…なおるよ。


いつかは、そんなこともあったって…笑えるよ。」




「……そうかな?」



冬彦と高椿邸との距離がどんどん離れていく。




「……冬彦にはそうなって欲しいよ…私にいつか、は…ないから…」





……!



夏美のその言葉に冬彦は足を止めた。






「……夏美…」




「ううん…大丈夫。ちょっと悲しいけど…

冬彦にはそのいつかを体験して欲しい…


人は傷つけながらしか生きていけないのかもしれない…私もきっと色んな人を傷つけてる…健一さん、尾野さん、それと……透も…」



冬彦は足を止めて、夏美の話しに耳を傾けていた。
< 335 / 363 >

この作品をシェア

pagetop