「キカイ」の子
夏美はまた顔を正面に戻して、話を続けた。



「あれは……先生に、職員室にあるプリントを持っていくように頼まれた時だったかな?

……私がプリントを抱えながら、廊下を歩いてるとね……私をいじめてた連中が道を塞いでたわけよ……


勿論、どいてって言っても憎たらしく笑いながら突っ立ってて、どこうとはしなかった。

そしたら、その連中…急に、私が持ってたプリントを思いっきり手で払ったのよ。」





冬彦は目を丸くしながら、黙って話を聞いていた。




「一瞬頭が真っ白になってね…連中が馬鹿みたいな声を出して走り去っていくのを、ボーっと見てるしか出来なかった……でも、すぐにプリントを拾い始めたんだけど…枚数が多くて時間はかかるし、周りからは注目されっぱなしだしで……ほんと、泣きたかった。」




「何で…誰も助けなかったのさ!」





冬彦は苛立った様子で訊いた。







「…いじめはね…助けた人が次のターゲットなのよ…」







夏美は悲しそうに、そうとだけ答えた。
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