「キカイ」の子
「な、何?」




冬彦は少したじろぎながら夏美に訊いた。






すると、彼女は長いため息を吐いた後、不機嫌そうに話した。




「…いなかったの。」





「は?」






「だーかーら、私が頭を下げて、ありがとうって言って、顔を上げたら、冬彦はもう、とお~くを歩いてたわけ!」





夏美が頬を膨らませながらそう話すのを、冬彦は苦笑いを浮かべて見ているしか出来なかった。







しかし、彼女の顔はすぐに笑顔になった。







「でも……助けてくれたのは本当だしね。それにあの頃から冬彦は学年でチョー有名人だったから、そんな人に助けてもらった私は、めでたく、いじめから解放されたのでした。めでたし、めでたし。」






「そう…だったの…」





冬彦は安心した声を出して、夏美を見つめていた。






「まぁ、もう少し愛想が良くても良かったかなぁとは思うけどね。」







夏美のその言葉に、冬彦は苦笑いを浮かべ、その様子を見た彼女は、クスクスと笑っていた。
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