「キカイ」の子
「…どうしたの?夏美…」



冬彦はそう言いながら、指先で夏美の頬を拭った。






「…嬉しいの…もう、雪なんて見られないと思ってたから……」







「…そう…」






「……雪は冬の象徴…」




「え…?」





冬彦がそう訊くと、夏美は笑って話した。





「気付いてた?冬彦?私達の名前には季節があるの。椿の春に…夏美の夏…鍬の秋に…冬彦の冬。」





「……ああ、本当だね!気付かなかった。」





楽しそうに話す冬彦の隣で夏美は悲しい顔をした。





「でも、私の名前は秋まで……冬には届かない……」






「夏美……」








……病気と重ねてるんだな…








秋までしかもたない命。










冬に会うことの出来ない命。










夏美の心を察した冬彦は、穏やかな笑みを浮かべて話した。
< 347 / 363 >

この作品をシェア

pagetop