「キカイ」の子
「バカだな、夏美は。」




「なっ!」





冬彦の言葉に夏美は怒りを顕にした。










しかし、その顔は次の瞬間呆気に取られる。













冬彦が力強く夏美を引き寄せたからだった。








「ふ……冬彦?」






「良く考えてみてよ。夏の隣には春。秋の隣には冬…」








そう言って冬彦は、更に強く抱き寄せる。


















「夏美の隣に、僕はいる。」













冬彦がそう言うと、夏美の目から新しい滴がこぼれ始めた。









冬彦は、横からではなく、真正面から夏美を抱き寄せた。









夏美の嗚咽が、冬彦の胸に染みる。









「それは…僕の隣には夏美がいる、ということでもある。」







夏美は、彼の名を呼びながら、彼の胸に顔を押し付けて泣いている。
















「夏美……君は一人じゃない。」
















冬彦がそう囁いた後、二人はまるで溶け合うかのように、互いを強く抱き締めていた。
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