「キカイ」の子
「…ありがとう。冬彦。」






抱き合ったまま数分が経ち、夏美は力無く呟くと、ゆっくりと離れた。







「夏美……」







「私……今……最高に幸せ。本当に…冬彦と付き合って……冬彦と出会えて……」







夏美の声がどんどん弱くなる。






「ま、待ってよ。夏美。」








冬彦はいきなりのことに狼狽えていた。







……まだ、夏美と話したいんだ!夏美の声を聞きたいんだ!















…まだ、夏美と一緒に居たいんだ!










「私……冬彦と会えて…」








「夏美ぃっ!」







冬彦は思いっきりの力で彼女を抱き締める。















「…ありが…とう…冬彦……私……しあわ……」















辺りにはしんしんと雪が降っている。










まるで、雪の降る音さえ聞こえそうな静けさの中、夏美はゆっくりと逝ってしまった。
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