「キカイ」の子
雪の降る柊神社に、一人取り残された冬彦の泣き声が微かに響く。










「ズルいよ…」







鼻声で冬彦は呟く。








「いっつもいっつもさ、夏美は……勝手に……決めて……僕より先に行くんだ……僕はいっつも、夏美に振り回されてさ……」









いつもなら、ここで入っていた夏美の怒声が無いことは、彼をいっそう虚しくさせた。









「夏美?君には隠してたけど…僕は機械なんだよ?凄いだろ?」







夏美の表情は眠ったままで、わかってはいたものの、冬彦にどうしようもない悲しみが覆い被さる。









「……夏美。」








冬彦は眠ったように死んでいる夏美の頬を、髪を、何度も優しく撫でる。









「僕も……僕も……幸せだったよ。夏美に会えて、夏美と付き合えて…」













そう言って冬彦は夏美にキスをした。

















雪が夏美の目尻に落ち、まるで涙のように流れ、彼女の頬を伝っていった。
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