「キカイ」の子
見晴らしの良い丘に、小さな二つの墓石がある。












その前には、白衣を着た男が、じっと墓石を見ながら佇んでいる。









墓は高椿冬彦のものと、鍬原夏美のものだ。








そして、東林大学病院と宮瀬という文字が、男の白衣につけてあるネームプレートには書いてある。











「……随分…かかっちまったな……」










その男は昔を懐かしむようでいて、どこか悲し気な声を出した。



















「透~どこ~?」









遠くから、女性の声が聞こえてくる。














「ここだよ、ここ!」








そう言って、その白衣を着た男は後ろを向いて、手を振った。


























白衣を着た男は、宮瀬透だった。
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