「キカイ」の子

養護施設「やどりぎ」







夏美はその施設に十年以上住んでいた。

「やどりぎ」の場所は、冬彦の家の前にある坂を下って、少し横道に逸れたところにある。




建物は古い一階建てだが、広い庭があって、とても温かい雰囲気をかもし出していた。










「いいかっ！冬彦。」



聡がまだ顔を赤くしながら言った。





「あの子と私達とでは住む世界が違うのだ。お前は将来日本を背負うべき人間だ。あのような所にいる人と関わる必要など、全く無いのだ。」



「そうよ。冬彦。何であの子に固執するの？恋人や結婚相手なら、ちゃんとした人を私達が紹介するから…」




郁恵がそう言って、聡を援護した。







冬彦は、夏美のことを罵る両親の言葉を聞く度に、胸が痛くなった。







そして、それと同時に、明日の予定に何の変更も無い事を理解した。