「キカイ」の子
「そうだな…下の名前で呼んでくれないかな?みんなにもそうしてもらってるんだ。」



健一は少しだけ考えた後、そう言った。



「……健一さん?」

「そうそう。そうでないと、やりにくくって…」






そう言って、健一はまた頭を掻いた。







冬彦が長い間、健一と接してきて感じたことは、どうやら彼は堅い会話が苦手なようだ。



医者という仕事柄、いろんな人から羨望と尊敬の眼差しで見られるが、彼はそういったことを快く思わなかった。







偉ぶることもなく、その温和で素朴な人柄故に、患者の間でも人気があった。







冬彦を直接診ることは無かったが、何度も院内で顔を会わすうちに、自然と二人は話すようになった。
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