「キカイ」の子
「何?」



天野はそう答えながら、まだカルテを書いている。





冬彦は、気にせずに尋ねた。






「あの……ここ最近、時々、胸が痛くなるんですけど…これは一体何なんですか?」







「……胸が痛い?」




天野は、ついにカルテから目を離して、冬彦を見た。







眼鏡の奥にあるその目には、驚きの感情が浮かんでいた。







そして、しばらく冬彦の方を向き、何秒か考えた後、




「診てみたけど、異常は無かったよ。たぶん、その痛みは、ストレス等から来る神経痛なんじゃないかな?」






と、淡々と述べ、天野はまた、カルテに向かっていた。









冬彦は、これ以上訊いても無駄だと思ったため、立ち上がって、再度礼を述べ、部屋を後にした。
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