「キカイ」の子
「はい。わかりました。」





冬彦がそう答えると、健一はまた、顔をくしゃくしゃにして笑った。











「あの~、完全にあたしを忘れてません?」







夏美が、少し頬を膨らませて、言った。







「あぁ、ごめん、ごめん。…それじゃ、僕は仕事に戻らせてもらうよ。」







夏美に軽く謝った後、健一は二人に背をむけて歩きだした。





冬彦は、まだ健一の方を見ている夏美に声を掛けた。




「それじゃあ、行こうか、鍬原さん。」

「えっ?」




「お昼…一緒に食べるんでしょ?」




冬彦が、素っ気なくそう言うと、夏美は健一よりも顔をくしゃくしゃにして、嬉しそうに、








「うんっ!」







と明るく答えた。











遠くから、二人の様子を隠れて見ていた健一が、



「……若いねぇ~」



と、ボソッと笑顔で呟いた。
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