「キカイ」の子

冬彦が着替え終わって、階段を降りた後リビングに向かうと、郁恵と会った。





「冬彦。母さん、今から出かけるわ。ちょっと会社で何かあったみたい。」




彼女は足早に廊下を抜けると、靴を履きながらそう告げた。



「はい。わかりました、母さん。」




冬彦は、玄関の方を振り向きながら、彼女とは対照的に、落ち着いた声で答えた。




「今日中にはたぶん帰って来れないから、戸締まりはちゃんとしてね。あと…明日のお弁当も…」

「わかってます。ちゃんと、僕が作って持って行きます。」





それを聞くと、郁恵は、いい子ね、と小さく言った後、外に出ていった。







扉の閉まる音が小さく鳴った。