「キカイ」の子
「透。遅いよ。」




約束の時間を十分ほど遅れてきた透に向かって、冬彦がぼやいた。




透はオレンジのTシャツに青いジーンズという格好だった。


「悪い悪い。だから…慣れねえカッコはやめとけって、言ったんだよ、昨日。」




透は冬彦に謝った後、振り返ってそう言った。


走ってきたのだろうか、深呼吸をして息を整えている。







「誰に話してんの、透……」







冬彦が、透の肩越しに向こうを覗くと、青いきれいな浴衣を着た、見慣れない女性が息切れしながら立っていた。






「うるっさいなぁ~いいじゃん、こういうのは気分でしょ。キ、ブ、ン。」







女性はそう言いながら、顔を上げた。








その声に冬彦は聞き覚えがあった。









その女性は夏美だった。
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