「キカイ」の子
「鍬…原…さん?」






冬彦が目を丸くしながら、夏美に話し掛けた。







「あ…高椿君。へへ……今晩は。」







夏美は、冬彦に気づくと、照れながらそう言った。





「どう…かな?似合ってる?」




夏美が、ちょっと、うつむいて冬彦に訊くと、彼は、戸惑いながら答えた。




「うん。とっても…似合ってるよ。鍬原さん。」


「そーそー。馬子にも衣装ってやつねー」





透が横から茶々をいれたため、夏美は、彼を睨み、近寄ろうとした。






しかし、浴衣姿だったため、うまく動けず、彼女はそこに立ったまま、透を睨みつけていた。





「ささ、フユピコ、早く中に入ろうぜ~」



透はそう言って、冬彦の肩を掴んで、中に入ろうとした。






「鍬原さん。行こう。」





冬彦が、振り向いて夏美にそう言うと、彼女は、



「うん!」




と、笑顔で答え、小走りで彼らに近寄った。
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