「キカイ」の子
会場は人でごった返していて、様々な人の話し声が飛び交っていた。







「うひゃ~、すげぇ数だな。迷子になんなよ、夏美。」







歩きにくそうについてくる夏美に、透が笑いながら言った。






「誰が……あっ!」





透に突っかかろうとした夏美だったが、途中でバランスを崩してしまった。







「ふぅ…歩きにくいなぁ。」


「大丈夫?鍬原さん?」



見ておけなかった冬彦が、夏美に近づいた。




「う、うん。ありがとう。」





夏美は恥ずかしそうな声でそう答えた。









そんな二人の様子を、透は、悲しそうな表情で眺めた後、すぐに笑顔になって歩き出した。







しかし、彼は二人とは逆の方向に歩いていき、人混みの中に消えた。
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