「キカイ」の子
夏美に引かれて、冬彦は走り、二人は、いろんな屋台や人の隙間を縫うように走った。






一分ほど走った時、二人は林を抜けて、小高い丘に出た。






そこに、人はおらず、横に大きく古い木が一本あるだけで、目の前には冬彦達の街が広がっていた。







「こんな場所が…」


「はっ…はっ…どう?けっ…こう、いい、でしょ?」




冬彦が息を乱さずに言った後、隣で大きく息をついている夏美が言った。





「大丈夫?鍬原さん?」



「へ、平気……いや、こんな、カッコで、走ったから…ちょっと…キツい」







「ゆっくり深呼吸して。どこかに座ろう?」





「う、うん。そうする。」







冬彦は上着を脱ぎ、草の上に敷いて、彼女をそこへ座らせた。







彼女はまだ荒い息をしていたが、大分落ち着いたようだった。
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